「わぁ、」

あたしは思わず声を上げる。嬉しいのと、感動からだろう。

そして、安心もあったとおもう。

髪型さえ変わっていれば、もう”薔薇姫”なんて呼ばれることはないだろうから。

あたしはその呼び名が大嫌いだからだ。

”薔薇”はすきだ。だけど、”薔薇姫”は琉といた頃のあたしだ。

今更、そんな過去を思い出したくなんてない。

「麗薇、可愛いよ。」

千鶴は優しくて、言葉にスッキリと出して褒めてくれる。

「似合ってるぜ。」

あたしの座っているイスの高さまで腰を落として、あたしの頭をポンポンしてくれ

る、女好きの大河。でも、きっとこの人はかくしてる。

あたしに、隠してるんだ。そんな瞳をしているから…………。

「まあまあ、だな。」

千紘は、千鶴とは違って口がきつい。なんか、女の子の前で可愛く演じて見せてい

たのを見たことがあるけど、あたしにはそんな素振りしたこともない。

それだけ、あたしに心を開いてくれているってことなのかな。

「……。」

遙真は相変わらずなんにも言ってくれないけど、すこしだけほっぺと口角が上がっ

ているように見える。

女好き、克服してほしいな。

「いいんじゃねーの。」

そういって、そっぽを向く蓮。全然表情が読み取れない。

でも、この人たちと今、この人たちといれることが、何よりの幸せだ。

あたしはいつか、こんな日々を頭の中で空想として描いていたのかもしれない。