『あいつらもばかね。こんな嘘に騙されるなんて。』

その女は、あたしに殴った。

胃がキリキリする。

「ごめん、あたし保健室行ってくる。」

そう言い残して、あたしは駆け出した。

やめて、思い出さないで…………。

必死で心に唱えても、変わることはない。


くるしくて、悔しくて。

ただただ、されるがままだったあたし。

あの女のせいで、仲間をうしなったあたし。

『どうして、あたしを愛してくれないの？』

ボロボロの体で、必死に彼を見上げる。










『決まってるだろ。お前が嫌いだからだよ。』


彼は、あたしを蹴り飛ばした。








息が苦しい。

胸が苦しい。


全てが、苦しい。

あたしは少しでも落ち着きたくて、空を見るために屋上に向かった。

場所はあらかじめ、先生に教えてもらっていた。

「……はあ、は……あ、はあ」

どうして、今思い出すの。

足に力が入らない。

怖くて、悲しくて。

ガチャ

あたしは、トビラを開けた。

「？！」

向こう側にいたのは、クラスメイトが言っていた、桜龍だった。

彼らがあの人たちとダブってしまう。

『お前、なんでここくんだよ。」

どうして、あたしを、愛して。

あの子じゃないの。

あたしを、愛して…………。

『出ていていけ。お前なんてイラナイ、』

「………な……ん…で、そんなこと、言……うの……」

息が出来ない。

「……亜、衣梨じ…ゃなくて、あたしを……愛して……」

「おい、麗薇？」

もう、あたしには誰の声も聞こえない。

「あ……たしは、や…ってない……」

みんながあたしに向かってきて、責めるんだ。

やめてよ、あたしを愛してよ。

亜衣梨が、裏切っているのよ。

あたしじゃない、あたしはなにもしてない。

あたしは、愛されたいだけ。

頭に酸素が回らなくなって、クラクラする。

限界を迎えた足は、ガクッと力が抜けていく。
「……あ、たしじゃ、ない、のっ！」

精一杯、彼らにとどくように。

「……お願い…、信……じてっ！」

『信じられれるかよ。裏切り者の癖に』

「どう、して」

視界が歪んでいく。

あたしを、傷つけないで。

涙がダバダバと流れる…。

「……あた……しは、好き……なの」

その瞬間、視界が暗くなって、あたしは目を閉じた。