「いいよ、いいよ。いつもあたし1人だから。」

無駄におおきな車に乗っているのは、あたしと運転手さんだけ。

大きくする必要あるって思うけど、口には出せない。

それをすると、周りを困らせることになるから。

「ありがとうー、麗薇大好き!」

華夏が大袈裟に抱きついてくる。

”大好き”って、華夏は言った。

それは、きっと友達間の”大好き”。

いつだって、そんなのはすぐに消える。

”信じてる”、”愛してる”なんて、上っ面だけの言葉だ。

気持ちなんて、すぐに変わるしずっと愛し続けてくれる訳でもない。

こんな気持ちを2人に悟られないよう、あたしは笑って過ごした。

「わあ、麗薇んちの車でかいねえ」

菜月が感嘆の声を漏らす。

確かに、こんな車で送りたくなんてなかった。

外車で、しかも高級車なんて………。

車に乗り込むと、2人があたしに向く。

「麗薇の家って、お金持ちなの?」

「お父さんが社長なの。…………華王財閥の。」

”華王財閥”

あたしはそれを小さく言った。

色んなことを思われるのが怖くて。

「すごいじゃん、麗薇。

でも、麗薇は麗薇だよ。」

菜月はあたしの目を見て言ってくれた。