今ならチャンスと思ったのか、琉と柊星があたしの周りにいる奴らを倒す。

一瞬の隙が出来たボスに蹴りを食らわせ、あたしは琉たちの元へ急ぐ。


「……琉っ!」

菜音は柊星に任せ、あたしは琉の元へ走った、



「……いっ?!」

「そう易易と行かせるかよ」

ボスは、あたしの髪を掴んでいた。痛くて、離れられない。


「じゃ、バイバイー!」

狂った笑と共に、鋭い痛みが襲ってきて、あたしは記憶を失った。



「……麗薇っ!麗薇───っ!」

陸の声が、夜の空にこだまする。

……弱くなったね。前のあたしなら、こんなのなんともなかったのに。

強くなとうしたのに、あたしは結局弱かったんだ。

少しだけ、声だけは聞こえた。我龍のみんなが、ハンゲキする音。

「……もう、お前を目の前で失うのはウンザリなんだよ……」

ツカサの、悲しそうな声。

それ以上は、あたしにはもう分からなくなっていた。






『いい加減、思い出しなさいよ。今のあんたはあんたじゃない』

……うん、わかってるよ。

『偽りの仮面を被って……1人でマスカレードてもしてるの?』

そう、あたしはいつだって自分を偽っていたのかもね。

”そう”なりたいと、思っていてしまったから…。




彼は、いつだって言っていた。

『自分を大切にして』と。

彼は……琉は優しかった。出会った時から、ずっと。

彼は死ぬほど嘘が嫌いだった。だから、あの日、あたしのことを『嫌い』といわれたとき、信じたんだ。

……彼が嘘をつくはずがなかったから。



そこまでして、彼らが思い出させようとしているのは、なんなの?
あたしの中の、なんだっていうの?