「……あたしのこと、連れ戻しに来たの?」


あたしがそっちを振り向かずそう言うと、彼女はあたしの名前を呼んだ。

「いえ。麗薇さんの気持ちを聞きたくて。彼らにも連絡はしません」

それから、菜音はあたしの目の前でスマホの電源を切ってみせた。

「……菜音。あたし、最低なんだ。」

「え?」

彼女も同じように、ブランコに座った、

「漣斗は、あたしの彼氏なんだ。それから、我龍には戻るって言っちゃった。後、
みんなのこと許すっていったの」


「矛盾してるでしょ。」

「確かに、そのままだと最低ですね」

菜音はハッキリといった。

「……だけど、麗薇さんが本当にしたいことをすればいいんじゃないですか」

今は頭が混乱する。

……傍にいたいと、ずっと離れたくない相手に対して”好き”と言うならば……。

「あたしは漣斗の傍に、いたいのかもしれない。ううん。傍にいたい」

「……わかりました!手伝いますよ、帰るの」

「え、でも菜音がそんなことしたら、雫雲たちに……」

琉はともかく、イマミヤ、雫雲に怒られることは当然となる。

「いいんです。きっと、傍に万友がいてくれるから。」

星を眺めるその横顔は、愛しさで満ちていた。

「はい、その靴だと、歩けないでしょ?」

菜音が差し出したのは、黒の靴下とスニーカー。

「ありがとう。」

あたしはそれに履き替えた。

「……本当に、ありがとう、菜音。」

「じゃ、行こっか!」

照れくさそうに立ち上がった菜音の後を、あたしは追いかけた。

……これから、側へ向かうよ、漣斗。


……そう、戻れるはずだったんだ。






「あっれー?凛龍のオヒメサマと桜龍のオヒメサマじゃーんラッキー」

公園の出口で、数十人の不良と出くわしてしまった。