「……チッっ!クソっ!」
手なんかどうでもいい。壁が壊れたって。だけど、今はこの怒りが、おさまらなかった。
「漣斗。血、でてるよ」
ソファにどかっとすわると、世話好きの大河が勝手に手当を始める。
「……手当なんか、いらねぇ」
はあ、とため息をつく。
俺のせいだった。完全に。俺の不注意で、麗薇が雫雲のところに……。
もしも、過去を思い出してしまったら……。その時はそばに居るって約束したのに
会いたい。抱きしめたい。
やっと、俺のそばに来たんだから……。
『麗薇ちゃん、麗薇ちゃん。また、雫雲と遊ぶの?』
『うんっ!きょうはふらんすごを教えてもらうの!』
知り合ったのは、俺たちが5歳のころだった。
まだ未薇さんもいて、幸せな家庭だと嫉妬したのを覚えている。
彼女はストレートの黒髪と、真っ赤な唇をもっていた。
今思えば、あれは一目惚れというやつなんだろう。
真っ直ぐな瞳に、写して欲しかった。
『これはね、青薔薇だよ。青薔薇は珍しいんだよ。』
そのあと、雫雲はいった。
『青薔薇の花言葉は”奇跡”と”不可能”なんだよ。…矛盾してるでしょ…』
俺は麗薇の欲しいことを与え続ける雫雲に勝ちたくて、ある色の薔薇の花言葉を麗薇にプレゼントしたのだ。
『あのね、この色……ふかべにの薔薇……』
『漣斗、それってしんくっていうんだよ?』
昔、麗薇は俺を”漣斗”と呼んでいた。まわりは漣と呼ぶのに、彼女は『漣斗の名前全ても愛してあげたいから』なんて笑ったのだ、
俺の単純な漢字間違いに、淳がわらった。
琉に至っては、呆れているかんじだった、
『……俺は、しんくって読み方よりも、ふかべにっていう読み方のほうか好きなんだもん。』
『わたしも、そう思うよ』
苦しい言い訳だったのだろう。でも、麗薇が笑ってくれる、それだけで……
それだけで全部よかったと思えた。
そして、俺は頭に付け焼き刃で叩き込んだ花言葉をいった。
『ふかべにの薔薇の花言葉は”死ぬほど、恋焦がれています”なんだって』
正直、幼い俺には理解なんて到底できなかった。
自分に見栄をはりたかっただけ。
そしたら、彼女の瞳は輝いた、
その瞬間、俺の世界は麗薇という色で彩られた。
手なんかどうでもいい。壁が壊れたって。だけど、今はこの怒りが、おさまらなかった。
「漣斗。血、でてるよ」
ソファにどかっとすわると、世話好きの大河が勝手に手当を始める。
「……手当なんか、いらねぇ」
はあ、とため息をつく。
俺のせいだった。完全に。俺の不注意で、麗薇が雫雲のところに……。
もしも、過去を思い出してしまったら……。その時はそばに居るって約束したのに
会いたい。抱きしめたい。
やっと、俺のそばに来たんだから……。
『麗薇ちゃん、麗薇ちゃん。また、雫雲と遊ぶの?』
『うんっ!きょうはふらんすごを教えてもらうの!』
知り合ったのは、俺たちが5歳のころだった。
まだ未薇さんもいて、幸せな家庭だと嫉妬したのを覚えている。
彼女はストレートの黒髪と、真っ赤な唇をもっていた。
今思えば、あれは一目惚れというやつなんだろう。
真っ直ぐな瞳に、写して欲しかった。
『これはね、青薔薇だよ。青薔薇は珍しいんだよ。』
そのあと、雫雲はいった。
『青薔薇の花言葉は”奇跡”と”不可能”なんだよ。…矛盾してるでしょ…』
俺は麗薇の欲しいことを与え続ける雫雲に勝ちたくて、ある色の薔薇の花言葉を麗薇にプレゼントしたのだ。
『あのね、この色……ふかべにの薔薇……』
『漣斗、それってしんくっていうんだよ?』
昔、麗薇は俺を”漣斗”と呼んでいた。まわりは漣と呼ぶのに、彼女は『漣斗の名前全ても愛してあげたいから』なんて笑ったのだ、
俺の単純な漢字間違いに、淳がわらった。
琉に至っては、呆れているかんじだった、
『……俺は、しんくって読み方よりも、ふかべにっていう読み方のほうか好きなんだもん。』
『わたしも、そう思うよ』
苦しい言い訳だったのだろう。でも、麗薇が笑ってくれる、それだけで……
それだけで全部よかったと思えた。
そして、俺は頭に付け焼き刃で叩き込んだ花言葉をいった。
『ふかべにの薔薇の花言葉は”死ぬほど、恋焦がれています”なんだって』
正直、幼い俺には理解なんて到底できなかった。
自分に見栄をはりたかっただけ。
そしたら、彼女の瞳は輝いた、
その瞬間、俺の世界は麗薇という色で彩られた。