「てか、萃(かなめ)は?」

「萃なら寝てるよ。けんかのげーいんつくったの、萃なのに。」

はあ、と雫雲はため息をついた。

「ったく、あいつら…」

雫雲はやれやれといった顔をする。

「麗薇、立てる?あいつらの喧嘩成敗しに行きたいんだけど」

「うん。大丈夫」

雫雲は手を差し出して、あたしをベットから下ろした。

……多分、逃げなきゃ行けないんだ。だけど、不思議とそんな気分なはならない。

彼の出してくれたスリッパを履いて、部屋を出た。

廊下はまるで洋風のお城。

そして、彼が扉を開けたのは廊下の一番奥の部屋。

ドアを開ける前でも、喧嘩の声が聞こえてくる。

「あー!もう!うるさいっ!!万友が菜音に構ってくれないからじゃん!」

ドアをあけるなり聞こえるのは男女の言い争う声。

それをまわりにいる琉やイマミヤがいる。そして、呑気にも寝ている子がいるのだ

「てめぇらうるっせんだよ!」

地を這うような低い声。そして、ただではない殺気。

その目で人を殺してしまいそうだ。

「…げ、雫雲」

喧嘩していた男の子が雫雲をみて顔をしかめる。

「あれ、雫雲だ」

呑気に寝てた子は起きて、あたしの顔をじっとみた。

「お初だね。よろしく」

彼はじっとあたしの顔をみてよろしくと言ってから黒の猫耳フードをかぶって顔を覆った。

「…よ、よろしくお願いします」

あたしを見つめる瞳は、紫色でライトに照らされた白髪が印象的だった。

「あいつ、萃はアルビノなんだ」

すんなり横にきていた琉がメンバーの紹介をする。

「琉……」

目を合わせた彼は、あたしに優しく笑いかける。

それから、ゆっくりとあたしを抱きしめた。

「チョット、麗薇僕のものなんだけど」

むくっとほおを膨らませた雫雲があたしたちを引き剥がす。

「お前のものでもないだろう」

今度は雫雲とあたしの間に入ったのは意外にも関西弁の抜けた普通のイマミヤ。

……ど、どゆー状況?

琉は後ろからあたしを抱きしめるし、雫雲は前から抱きしめる。

それを引き剥がすように横からイマミヤ。

「うわーおモテモテだねー」

あたしを冷やかしているのは万友だ。

「は、離してっ!暑い!!」

いくらクーラーがきいていても、これは暑い。