「漣?」

話さなくなった彼の顔を覗き込んだ、

「……え」

彼は、静かに泣いていたのだ。

月明かりに照らされて、キレイだった。

「もう、ここからは俺の口からは話せないよ。麗薇が、自分自身で見つけるんだ」

漣は目線を、合わせてくれない。なにが、そんなに漣を悲しくさせるの?

……あたし、だよね。あたしが漣を悲しくさせているんだよね。

あたしは涙をとめたくて、話題を変えた。

「そういえば、あたしは桜龍の中でどーゆ立場でいればいいの?」

突然きたあたしを幹部は愚か、下っ端くんたちまで優しく接してくれる。

「ああ、姫のこと?」

やっとこちらを向いてくれた漣の涙は消えていた。いつも通りの、かっこいいあたしの彼氏だった。

正直、あたしは姫にあまりいい印象をもたない。

昔、あんなことがあったんだし。

「なりたい?”桜姫”」

あたしが桜姫となれば、漣に並ぶ”初代桜姫”となる。

「漣の傍にいられるなら、あたしは姫になりたい。」

姫次第で、その族の強さがかわる。

弱点になりうるか、はたまた強みとなるのか。あたしは、絶対にもう護られたくなんてない。

『あたしは、護られたくないっ!』

ズキンズキン

『まてよ、麗薇っ!』

感極まったように、弾けたように駆け出したあたしを、幼い頃の漣が追う。

『みんなを犠牲にするぐらいなら、あたしは存在したくないっ!』

心臓が激しく蠢いて苦しい。