「亜衣梨は、今どうしてるの?」

最近、あたしは本邸には行っていない。というか、あたしたちは基本本邸には住むことができないから、亜衣梨がそこにいくとも考えにくい。

「あいつは今、母方の親戚に預けられているらしい」

「なんで?お母さんはそんなの許さないんじゃない?」

亜衣梨のお母さんは、とにかく亜衣梨が好きなように見えた。

唯莉には特に期待をしていたし、亜衣梨には深い愛情をもっていた。

でも、あたしたちは母娘ではない。しかも、あたしはお父さんの前の妻の子供。
鬱陶しいくてたまらないだろう。

「流石に、少しはそうした方がいいって思ったんじゃね?それか親父さんに言われたかだな」





──────…………もう、覚悟を決めよう。



『 あたしの昔 』を聞こう。たとえ、どんなでも。



「漣。あたしの過去を教えて……」

あたしは記憶がないから、分からない。昔はどうやって漣たちと知り合ったのか。

昔のあたしは、ほんとうのお父さんのこと、知ってたのか。

イマミヤの言ってたことは、ほんとうなのか。

『 あたしがお母さんを殺してしまった 』のか。

あの、あたしを呆然と見つめる金髪碧目で、目元にホクロがある、あの美少年は誰なのか。

「俺たちは、お前の家繋がりで会ったんだ。会う場所はいつも、麗薇と未薇さんが好きだった白薔薇の庭園がある、雫雲の家でだった。」

昔のあたしは、あたしのお母さんは白薔薇が好きだったんだ……。

じゃ、記憶のあれは雫雲、って言う人の家?

白薔薇が、紅に染まる……。

「お前と雫雲は特に仲が良くてな。俺たちはいつも嫉妬してたよ」

漣は歩き出して、やがて窓縁に座った。あたしも惹き付けられるように、傍に座る

でも、あたしはその1番仲が良かった雫雲と言う人とあっていない。

「あの時は、楽しかったよ。麗薇がいて、琉がいて、淳がいて、雫雲がいて、俺がいる。あの時は唯一俺に許された時間だったから。」

遠くを見つめる漣は、どこか儚い。

「だけど、ごめんな。麗薇」

それだけいって、漣は話すのをやめてしまった。