「ほんと、ごめんな。傷つけて」

暖かな右手を、あたしのほおにつけた。

「漣は、全部しってるんだよね?」

あたしは漣の手を握り返して、問いかける。

「ああ。最近しったことも、ある」

整いすぎた顔と、月明かり。

その整った唇で、残酷な真実を語るのだろうか。

「亜衣梨が、今あっちの姫をしてないって……どういうこと」

「あいつは、琉たち我龍に愛されるお前に嫉妬してやつらに取り入ろうとしたんだ
そして、麗薇をおいだそうとした。まずは咲夜から」

だけど、どうして琉はそれにのってあたしを追い出したの……?

「咲夜は自分に取り入って我龍の姫になろうとしていたことに勘づいた。だから、それを琉に言って麗薇の父親に報告した」

亜衣梨がなんで、我龍に取り入ろうとしたの?

あの子はみんなから愛されてたんじゃ……

「それから─……計画は始まった。おまえの父親は亜衣梨がなにか行動をおこすとはわかっていたぽいな。」

「”計画”ってなんなの?」

「実は、お前の実の父親から俺たちお前の幼馴染の俺、琉、淳、雫雲の誰かと結婚させることになってたんだよ」

あたしの実のお父さんが……?なんで、あたしとあたしの幼馴染を?

「それからその人を決めるために、琉と父親が計画したんだ」

「あたしを我龍から追い出す作戦?」

「いや。お前を我龍から追い出してひとりにすれば、愛されたいと思う麗薇はますます愛されたいと思う。そしたら、浮気はないだろう。って」

次に会うひと……次に恋する人に依存するってことだよね

「お前の父親は浮気の多い人だろ?だから麗薇はそうならないようにな」

少なくとも、お父さんはあたしのことを娘と思ってくれてたってことかな。

そうならば、うれしい。

「亜衣梨は麗薇が追い出されることが、嬉しかったみたいだな。その前に唯莉が亡くなったみたいだったからな」

漣って、唯莉のことしってたんだ

でも、それって……亜衣梨が唯莉の死に関係しているようにも聞こえる。

「唯莉の死は紛れもなく事故だよ」

あたしの考えを読み取ったように答えた