side 麗薇

「ただいまー」

大河に話を聞いてもらって飲み物を飲んだところであたしたちはへやに戻った。

「びっくりしたぜー、だって大河が急に出てくんだもん」

すっかりご飯を食べ終わった千紘が足を広げながらいった。

……大河、早く駆けつけてくれたんだ……。

「……麗薇。泣いた?」

あたしの目の下に人差し指をそろりとおいて、顔を急接近させた漣がいった。

あんな事実を知った後でも、あたしは漣にドキドキしてしまう。

聞いた方がいいのかな。

だけど、もしそうだとして……今の関係が崩れたら。今のままじゃ居られなくなったら。あたしはどうするのだろう。

あたしは席について、豪華な夕食を食べ始めた。

「おい、トランプしよーぜ」

早く食べ終わった組がトランプをして遊ぶ。あたしはただただ眺めた。

トランプみたいに、自分の手札を全部渡せたらいいのに。

「……やっぱり、気になる…」

「漣、ちょっといい?」

あたしは今いるへやの隣を指さした。そこは寝室みたいになっていて、襖で2つに分けることが出来る。

あたしはさっきいた所から1番遠い場所を指してそこにいった。

「麗薇、どうした?」

もし、この関係が崩れてしまったら、今みたいに優しく名前を呼んでくれることはもうないのかな

優しく抱きしめて貰えないのかな

「……漣、あのね」

あたしには、その勇気があるのだろうか。

すべてを壊して、すべてを知る覚悟が。

その先に何も無かったとしても、あたしは喪失感に耐えられるのだろうか。

ひとりはいやだ。

あたしはひとりの怖さと寂しさをしってる。

「……あたし……」

まともに、彼の顔をみることは出来ない。今、どんな顔してる、のかな

琉たちに捨てられた日々に戻ってしまっても、あたしは耐えられる?

……無理だよ、あたしには……そんなの耐えられない

やっとみつけたヒカリなのに。手放すことなんて、できない……

「あ、明日はちょっと海で泳げないかな!」

咄嗟に思いついた言葉を並べて、視線を外した。

「そうか。わかった」

それだけの言葉だけど、優しさがふくまれている。

「───麗薇」

黒のキングは、すべてを統べる声であたしの名前を呼ぶ。

それから、彼の逞しい腕に抱かれる。心臓からは規則正しい音が聞こえる。

それ以上、なにも言わなかったけど、普段の彼とは違うく見えた。

……ねえ、あたしが昔に最低なことをしてたら、軽蔑する?

……ねえ、本当はあたしたちが幼なじみで昔に会っていたとしたら?

……ねえ、絶望を知ってしまったら?

「ごめん……」

彼はなにに謝っているのだろうか。

うわ言でそう言っているらしく、あたしにはわからない。

「俺は……俺達は幼馴染だよ……」

「…え、?」

悲しい、彼の声とマヌケたあたしの声が響いた