「え……?今なんて」

あたしが、あたしのお母さんを殺した……?

「どういうことよ!」

あたしはイマミヤの胸元の服を掴んだ。それから、彼を見上げる。

「教えて欲しいか?」

こうやって答えを焦らすのは、どうしてなんだろう。

「教えて欲しいに決まってるじゃない」

あたしが睨むとハッと乾いた笑みをこぼして、ニヒルに笑った。普通の人がすると気持ち悪いこの仕草も、無駄に顔が整っているこいつがやれば様になる。

「”タダ”でなんてこと、ないよな?」

そういって、前に歩いてくるからあたしは後ずさりするので壁にぶつかる。

「……なあ、麗薇」

いつもよりも優しくあたしの名前を呼ぶと、イマミヤはあたしの右腕を壁に縫いつけた。

「離して、よ!」

身をよじっても、ビクともしない。

「お前には、消した記憶がまだ他にある」

口角が上がったまま、話し始める。

「まだ、他にあるの?」

腕を縫いつけられていることも忘れて、彼の話に聞き入る。

「お前の父親はあの日から変わったよ」

イマミヤは、あたしの父親を知っているのだろうか。

変わったってどういうことなんだろう。

「前は血の繋がりなんてないって分かっていた娘を愛していたのに」

「血の繋がりのない、娘?」

それって、あたしのこと?

それとも、違う……どっちにしろ、あたしはお母さんとお父さんの子供。

「お前の事だよ」

あたしと、お父さんは血が繋がってない?

「そんなわけ、ないじゃない!」

そんなわけ、ない。あたしはお父さんの子供。

……でも。あたしが愛されない理由が、あたしとお父さんが他人だからだとしたら。

「てか、なんでイマミヤにそんなことわかるの?」

自分でも、感情が抑えきれなくなって興奮してヒステリックになってるって、わかるってる。

「幼なじみだし、あまり前だろ」

「やめて、それ以上、言わないで!」

これ以上は、知っては行けないと、あたしの頭が警告音を鳴らす。

「ちなみに、漣も琉も西の総長の雫雲(なぐも)もお前の幼なじみだよ」

まるで、ガラスが割れたようだった。