用意された浴衣をきて、喉が乾いたから飲み物を買いにいく。

暗がりの廊下、月明かりと自動販売機のライトだけがあたしの姿を浮かばせている

お金をいれて、スイッチを押す。鈍い音と共にででくるのはミルクティー。


「お前、ほんとミルクティー好きな。」

聞こえた声に、あたしは振り返った。ここでは聞こえるはずのない声だから。

その人はよう、といって彼の利き手である左手をあげた。

その姿が今は怖い。だからあたしは後ずさりしてしまう。

「おいおい、逃げなくてもいいだろーが」

ジリジリと距離を詰めてくる。

「離してっ!」

やがてあたしの腕を掴んだ。そして月の光が真っ直ぐと彼を照らす……。

「なんでここが…………イマミヤ、、」

いるはずがない。凪紗くんは一緒にきていないし、最近彼は倉庫にいない。

「……ふふっ、お前に真実の欠片を教えるためだっていったらどーする?」

余程真剣な話らしく、彼お得意の関西弁がない。

「…真実の欠片?」

まったくもって意味がわからない。

亜衣梨のこと?

お父さんのこと?

唯莉の事故のこと?

凪紗くんのこと?

お母さんのこと?

ほら、ぱっと考えてもこれだけある。


「……お前は幼い頃のことをおぼえてるか?」

「……え?」

思いもよらぬその言葉。確かに、昔のことは思い出しずらい。

「あたしは……ぼやけてる。完全には覚えてない……だけど、こんなの普通でしょ?」

あたしの歳で小さい頃を思い出せないなんて、普通だろう。

「お前は忘れてるんだよ。お前に都合よくな。」

……あたしが、あたしに都合よく忘れている?

「お前は忘れたと自分に暗示することでにげたんだよ。真実から。」




















「お前の母親を殺したのは、お前のクセに」