頬が、体が熱を帯びる。

そんなの、漣のほうがカッコイイに決まっているのに。漣のほうが注目されるのに

「ほら、行くぞ。」

漣が手を差し出してくれて、あたしはそれは手を重ねた。

暖かくて、ちょっとゴツゴツしてて、長い指。手を絡めて、笑いあった。

「麗薇、おせーよ」

と、千紘からはゲンコツの緩いバージョンみたいなのをくらう。

それから海に入って、浮き輪で遊んで、笑いあった。

あたしが失った輝かしい日々を、あたしは取り戻したのだ。

水を掛け合って、あたしが浮き輪で浮いていれば大河にひっくり返された。

「もー!大河!」

あたしは楽しそうに笑う大河をペシペシと叩いた。

漣のパーカは既にびちょびちょになってなってしまっている。

髪も濡れている。日焼け止めが取れているかもしれない。

……だけど、今は気にしない。

あたしは唯一楽しいと思えて、唯一のあたしの居場所を見つけたから。

何も知らなくて傷ついて、愛して欲しいと懇願したあたしとは違う。

あたしの隣には、あたしを支えてくれる漣がいる。

いざと言う時には守ってくれるナイトの千紘、千鶴、大河、遙真がいる。

あたしはもう1人じゃない。

あたしはもう1人で悲しまない。

彼らと喜びも悲しみも共有したい。

すべてを大きなベールで包んであげたい。

空は晴天。



「麗薇!かき氷食べようぜ!」




あたしの先を歩いて、あたしの進むべき道を教えてくれる。


手を差し伸べて、笑ってくれる。


漣。

あなたが笑ってくれるなら、あたしの世界は色で満ちている。


みんながいるから、あたしはあたしでいられる。



暗闇に閉じ込められていたあたしを見つけ出してくれた。


「うん!」

モノクロの世界はもうない。

今だけは、幸せを感じていたい。