side 遙真

「聞いてよ。俺の過去」

なんで、こう口走ってしまったのだろう。

なんで、俺の過去を最初に話す女が麗薇なんだろう。

こいつは優柔不断で弱くて繊細で……たまによくわからない。

こいつはよく、『愛して』という。

麗薇は『愛して』というその一言に、沢山の願いを込めているんだろう。

だけど、俺はもう誰にも”愛して”とは言わない。

なんでそこまで愛を求めるのか。愛を欲するのか。

穏和にみえて、じつは冷たいところもあった。

第一印象は、せいぜい”あの女”と同じってこと。

超絶美少女だから、とかいってチヤホヤされてきたんだろうな。

金持ちなら、散々ワガママをいってしたいこと全部してきたんだろうな。

……そう思っていた。

時々垣間見た、あいつの素の姿。

触れれば壊れてしまいそうなぐらいに細くて。

『愛して』と懇願しているのに俺には『嫌わないで』と言っている気がした。

強いものにしか縋ることができなかった。

あいつだけが、俺の頼る道だったのに…。

『俺を嫌わないで』

『俺を置いていかないで』

『俺の存在を認めて』

子供はきっと、自分を否定されるのが嫌で、怖いんだと思う。

取り繕う様はまるで、”マスカレード”。



「___お前なら、俺を受け入れられるのかもしれない」