「待てよ、千紘!」

こっちに走ってくる足音と、大河の声。

「漣、てめぇ!」

あたしたちは素早く離れた。いや、あたしは、というほうがいいかな。

漣はなんか嫌そうにしてたし。

「麗薇に何もしてねぇーだろーな」

「俺のいない間にイチャイチャかよ」

千紘はなんか漣を問い詰めているし、大河に至っては呆れているのかな?

「うるせぇ」

一言で黙らせてしまう天下の総長様は不機嫌。

「ったく、お前ら声がでかいんだよっ!」

遙真が後ろからふたりにチョップ。痛がる千紘と大河を爆笑しながら見る千鶴。

すべてが幸せで、すべてが光に満ちている。

仲居さんが来て、部屋に案内してもらう。

あたしたちが泊まるのはどうやら最高級の部屋らしく、寝室は分けられるようになっている。

京都の宿場町の旅館を参考にしたらしいが、その出来はホンモノ。

「わぁー!きれー!」

あたしたちは2階で、景色をみることができる。

西をみれば近くにある海のオーシャンビューがみられるし、東には古風のお城が立っている。

「ここ、俺がとったんだぜ?」

自慢げにいう大河に、あたしははじめてほめたいと思った。……はじめて、ね。

「今日だけはありがと、大河。」

「今日だけかよ?!」

あたしは笑いながら、みんながきがえようとしているところを抜けた。

そして誰もいない部屋で着替える。

水着のうえにロングワンピを着ると、部屋を出た。

『あちぃーよ!引っ付くんじゃねぇ!』

彼らが着替えてる部屋からきこえた千紘の声。どうせ、大河か千鶴あたりがひっついてんだろうな。