儚い。

日陰で眠る麗薇を見て、そう思った。

荒そうなのに、繊細で。

強そうなのに脆くて。

暖かそうなのに、冷めていて。

手を伸ばしたくても、伸ばせられない。

触れたくても、触れられない。

手を伸ばせば、触れれば、麗薇が消えてしまいそうで。

これが夢だと、言われそうで。

フラバしていたとは思えないほど、優しい寝顔を見せる麗薇。

まるで、刻を定められた桜のような……。

美しいのは、すこしだけだと分かってしまいそうで。

触れるのを、名前を呼ぶのを躊躇した。

ピクリ、と麗薇の整った眉毛が動く。

そして、苦しそうな顔をした。

「…りゅ、う。」

そう、こぼした。

お前は何を隠してる?

お前は何に怯えている?

お前はなんの闇を持っている?

時が止まったような、ここ。

誰も、声を出さない。

ただ、麗薇に見惚れている。

雰囲気の違う髪型に、うっすら分かるメーク。

もしも、これが自分達に会うためだとしたら……。

そう、1人で舞い上がってしまう。

麗薇。

背中に背負っているもの、おろせよ。

俺たちが一緒にしょってやるから。