「じゃ、千紘はこの先譲りたくないひとが千鶴と同じだったら、どうするの?」

「……麗薇の思ってる通り、譲るよ。」

そんなことをして、千鶴は嬉しいのだろうか。千鶴はきっと……。

「千鶴は喜ばないよ、。千鶴、自分で手に入れたものしか喜んで受け取らなさそうだしね……」

「お前はよく見てんだよな」

千紘は顔を伏せた。

「その”ひとつしかないもの”は結局俺を選んだんだ。初めに千鶴に興味があるとこいって近ずいたのに」

「……」

「俺もそいつが好きだった……。だけど、浮気してたんだよ。だから別れて…それからそいつは千鶴のほうへ行ったんだ……」

そのとき、千紘は、千鶴はどんなおもいだっただろう。

「……その女、最低」

「千鶴!」

低い声で答えたのは千紘の双子の弟、千鶴。

「その女も最低だけど、千紘、お前もバカだな。」

いつもの口調よりも少し強い。なんというか、すべてを制するような勢いだ。

「なっ、」

予想外のことをいわれて困っているのか、千紘はまともに声も出せていない。

「俺は……お前が傷ついてまで彼女がほしいとは思わない。」

「……千紘」

ふたりは互いに距離を詰めていく。

「次譲ったりしたらお前フルボッコする」

意外と簡潔に終わった。

「出来んのかよ」

てゆーか、千鶴が着いたってことは、みんな着いているんだよね?

「千鶴、みんなは?」

「女将さんと話してる」