移動はと言うと、何かあってはいけないため、車組とバイク組にわかれるらしい。

車とバイクの前に、みんなが腕を組んで待っている。

そして、千鶴の手にはバラバラにした割り箸。

「ほら!運命のくじ引きだよ」

それはまるで、席替えのような緊張感。なんでここまでなのかはわらかないけど。

「せーの!」

掛け声にあわせて、一緒にくじを引く。

「…ば、バイク……」

あたしが引いた割り箸には、『バイクだよ!キラーン』のもじ。これ書いたの、絶対大河だ……。

漣、千鶴が車組。あたしと千紘、大河と遙真がバイクだ。

バイクで全員が逃走出来るようにするため、持っていくバイクは3台。

従って、あたしは誰かの後ろ、ということになる。

「麗薇ちゃんは、もーいっかいひこーね」

語尾に音符が着きそうなぐらいにご機嫌な、大河。

持っていたペンで再び割り箸に名前をかくと、あたしに引かせた。

「千紘、とペアだね。」

あたしが引いたのは毒舌少年の、水崎 千紘くんだった。

「千紘、お願いね。」

「お前が乗ったらバイク動かなくなるんじゃねーの?」

そんなイヤミに、あたしは……。

「あたしは千紘よりも軽いわよ!」

そーいって華麗なる回し蹴りを披露したのだ。

「……いって……。お前、喧嘩できんのか?」

急に低音ボイスになる千紘の声。やばい。あたし、ちょっとやってしまったかもしれない……。

「できないわよ、」

目線を逸らして、誤魔化した。

「ふーん。……来いよ。」

痺れるほどに低く、甘い声に呼び寄せられる。

彼はあたしを抱き上げて、バイクの後ろに乗せてくれた。千紘に捕まると、千紘の匂いが香る。フレッシュな、でも少し甘いかおり……。