”華王麗薇”という人物は”俺”という人物を知らなかった。それは、どんなプレゼントを貰うよりも嬉しかった。

いつだって俺についてまわる如月の名。そこにかかる重圧は尋常ではなかった。

これぐらいはできて当然。

如月の名と完璧主義者の父親。なんでも出来る才色兼備の兄貴とは違う俺は毎日ただ、努力をした。

できたら褒めてくれて、認めてくれると思うから。

昔のように、頭を撫でて偉いと言って欲しかったから。

俺は孤独が嫌いだった。

ずっと、1人にされていたからだ。

『完璧ではないお前に興味など更々ない』

そう言われた。それは、俺にとって『お前は自分の子供ではない』と言われたきがした。

……その言葉はまだ希望を持っていた頃の俺にはとてもショックだった。

それから家を飛び出し、俺は1番荒れていた場所に踏み入れてしまった。

殴られ、殴り返す。

頬を掠める真っ赤な血は俺のものなのか、相手のものなのか分からない。

ただ、意識と身体がふらついていた。

相手が倒れ込むと、馬乗りになってそいつの顔を殴り続けた。

『おい、もうやめろ。そいつ、死ぬぞ。』

異様なオーラと黒い服。フードを被っていて目は見えない。