side漣






____この女は、俺を前の男と見間違えているのか。







それとも、俺に嫉妬心を持たせるための演技?

いや、そんな風には見えない。

フラバした表情も、瞳もまるっきり闇に染まりきっている。

こいつの、麗薇の深い過去が見え隠れする。、

抱きしめてやっても………こいつは”琉”………葉瀬 琉と間違うだけ。

それから、”琉”に愛してるというのだ。

麗薇は、俺が愛すると決めたのに。それなのに、気持ちはほかの男にあるなんて。

自分から”愛して”と請うが、自分の愛が報われないからなのか?

麗薇のことを知っているようで、実はなにもしらない。

俺は総長室のベッドに麗薇を寝かせると、頬をキスを落とした。

悔しくてたまらない。

朦朧とした意識でも、俺を”愛してる”と言って欲しかった。

俺の麗薇は何気なく似ているのかもしれない。

愛を求める麗薇。

家族を求めた俺。

求めるものが、似ているのかもしれない。

孤独な自分を闇から救い出してほしいと泣いたのか。

誰か助けて、なんて言えなくて苦しんだのか。

助けてっていっても誰も助けてくれなくて、自分だけが取り残される。

”如月”のため。家のため。そんなの、昔から聞いてきた。

利用するときは利用し、いらなくなったら捨てる。

それが、あいつらだった。

だけど、認めて欲しくて。

認めてくれれば、本当の家族になれる気がして。

俺の思い描いていた理想になる気がして。

だけど、その”理想”が向けられていたのはいつだって兄貴だった。

俺より数倍賢くて、スポーツもできてルックスも問題なかった。

周りは俺と比べ物にならないと、罵倒を繰り返した。

俺は”如月”の恥ずべき遺伝子。

兄貴は”如月”の誇るべき遺伝子。

だけど、兄貴が事故で亡くなり、今まで兄貴に向けられていたものがすべて俺に向いた。

もちろん、何に対しても”完璧”を求められた。

俺は、”如月”だから。