「美味しい。」

口に含むと、味が広がる。

もう遅い時間だったので、あたしはベッドに入り眠った。




「麗薇。麗薇。」

……誰?遠くであたしを呼んでいるのは。

「俺だよ。琉だ。」

……りゅ、う?

いやだ、こっちにこないで!

『俺がお前なんかを愛してるわけないだろ?自惚れんな。』

『 なんでかって?決まってるだろ。俺はお前が大嫌いなんだから。』

「んな嫌がんなよ。せっかく逢いに来てやってんのに。」

せっかくってなに?

あたしは会いたくなんてない。

だって、琉はあたしが嫌いなんでしょ?

会いに来る理由なんて無いはずだ。

琉が苦痛に歪んでいるであろうあたしの顔を見て笑い、手を取った。

……い、や。

離して!やだ、やだっ!

あたしの存在を全否定して、笑い飛ばすだけなんでしょう?

あたしはずっと前からいなかったんでしょ?

琉はあたしを愛してなんていかなったのでしょ?

大好きだと、愛していると思っていたのはあたしだけだったのだ。

「愛してるよ。今でもね。」

……なん、で?

「や……だっ!こな、いで!いやややぁぁぁぁぁぁ!」

耳を抑えて倒れ込む。そんなあたしを見ても、彼は笑うだけ。

どうして?

なんで、笑っているの?

あたしを今でも愛してるって何?

じゃあ、なんであたしを信じなかったの?

なんであたしの手を離してほかの女のところへ行ったの?

「また、会おうね。麗薇。」

耳に残る、あたしを罵倒する声と同じ声。

あたしには、それが怖くてたまらない。

どんなときも、その声には耐えられなかった。

大好きな人の大好きな声。

それに罵倒されるのは、とても辛かった。

あたしはずっと、琉を思っていた。

思いが冷めて言ったのではなく、一方的に切られた恋。

消化ができなくて、心がおかしくなっている。

今だって、好きだった気持ちに蓋をして思い石を置いているだけ。

誰か……あたしを抱きしめて。

あたしを離さないで。

あたしが必要だといって。

こんな空っぽのあたしでもいいと、いって。

頬に暖かいものが流れて、胸に何かが詰まる。

それを吐き出したいと思うのに、あたしにはそれがで来ない。

吐き出す相手を知らない。

吐き出し方を知らない。

心のうめ方も、心の満たし方も。

愛でさえも、恋でさえも、愛し方も。

全て、あたしには分からない。

こんなあたしを、どうか_____愛してよ。