来いよ、と手を差し出してくれる温かみも、全部優しさだと思いたい。

”あたし”に向けられるものだと思いたい。

あたしたちは大きなショッピングモールに行き、浴衣を選ぶ。

大河が言い出した、『全員浴衣で行こう』ということで、漣たちも必死で自分の浴衣を選んでいる。

さらにあたしが髪の毛片方上げてる人ってかっこいいよねって言ったらみんながそれ試してるし。

こんなに、笑顔で溢れる毎日が続いてほしい。

もう、あたしに不幸なんていらない。

どうしてあたしは幸せになれないの、と考えてたあのころのあたしに言ってあげたい。

あたしは、今この人たちといられてとても幸せだと。

あたしたちは時間を掛けて選び、合計で3時間も掛けてしまった。

あたしは黒の生地に、真っ赤な椿が描かれたすこし上品な浴衣。

みんなの浴衣は想像どうり個性的で、いろんな色が飛び出した。

あたしの楽しみがまた、ひとつ増えた瞬間だった。