後ろを向くと、メジャーでコートのサイズを測っていた。
「あ、ちょっと待って!
ずれちゃった。」
「大丈夫だよ、沙也ちゃん」
沙也ちゃんとは保坂さんのことだと最近知った。
保坂沙也子。
いちばん嫌いだ。
自分の周りを安全パイで固めてから人を見下すところも、目も、全て嫌いだ。
「……大丈夫?手伝おうか?」
保坂さんといちばん仲の良い花梨ちゃんに話しかけた。
数少ない、私がかろうじて話せる人。
彼女は固まった。
「……え、あー、大丈夫かな、華夏ちゃん。
……あっちの方が困っているっぽいよ。」
今度は私が固まった。
明らかに花梨ちゃんは保坂さんの顔色を伺っている。
「ないならいいや、ごめんね。」
何も悪いことをしていないのにへこへこ謝る自分にむかついた。
花梨ちゃんの言った方はへらへら笑いながら作業をしていて、困っている姿なんて一ミリも伺えなかった。