「……はい」
返事の後、再び沈黙。
雨がどこかの倉庫のトタン屋根を叩く。
吸い込まれそうな静寂。
「……それから、もう一つ。」
先輩が口を開く。
「……昨日の夜、携帯をいじっていたって聞いたんだけど。
見回りを高一に手伝って貰っていて、その高一がもしかしたら携帯かもしれないって教えてくれた。
本当のことを教えて、水口さん(絵奈)。」
これが、本題だったのかもしれない。
息を呑む絵奈ちゃん。
「……」
「……本当のこと、教えて?」
なおも沈黙する絵奈ちゃん。
「……携帯は、預けました……。
漫画を読んでいた時のライトだと思います。」
僅かに空気が震えている。
「……携帯では、ないの……?」
「……はい」
「……嘘を吐いていないって信じたい。
だけど、あの明かりは本当に携帯じゃないんだよね?」
「……そうです。」
ずっと黙っていた顧問が口を開いた。
「……合宿の目的、分かってる?
水口さんだけでなく、みんなも。
遊びに来たわけじゃないんだよ。
六日間、テニスのことだけを考える時間なんだよ。」