「今からバスに乗るから昨日決めた通りに乗ってねー!」


今年もある夏合宿。


去年は全然楽しくなかったけれど、今年は少し期待している。


春以来、少しずつ同級生と話せるようになってきた。


もう、『富木島さん』って苗字呼びをする人はいなくなった。


最近は、下の名前で呼んでくれている。


お互いに、まだぎこちなさが残りながらも仲良くなってきた。


「ハナ、乗ろうよ。」


「うん」


今年のバスは高一の先輩と同じだ。


去年は嫌すぎてバスの座席なんてほとんど覚えていない。


ただ、一人でひたすら音楽を聴いていた記憶がある。


「長いね、五泊六日は。」


「わたし、合宿なんて初めてだよ。」


そうだった。


「けっこうハードだよ。

普段やらない練習もやるんだよね。」


「うわあ、聞くんじゃなかった!」


「んー、でも終わってみると来年もいけるかもって変な自信が湧くんだよね。」