「へえ、そうなんだ。」


確かに、見たことのない名前が一つだけあった。


この学校は完全中高一貫校だから、高校からの外部募集は行っていない。


帰国子女なのかもしれない。


確か、永岡由貴乃、だったと思う。


こんな子いたっけなんて思って気にしていなかった。


「これから、始業式を始めます。礼。」


生活指導の先生が前に出ると、一瞬にして生徒達は黙った。


「校長先生から、お願いします。」


「皆さん、おはようございます。

一つ、新しい学年に上がりましたね。

この春休みは有意義に過ごせたでしょうか。」


全く楽しくなかった。


遊ぼうと思っていた日は全て部活に潰され、その部活の中でもいじめは収まったが、今度は態度がよそよそしくて居心地が悪かった。


無理やり名前を呼ぼうとしているから、喜ぶべきなんだろうけれど、どこかで冷めた目で見ている自分を無視しきれなかった。


「さて、中学二年生の皆さんには、初めて後輩ができます。

部活などでも質問されたら、優しく答えてあげてください。」


後輩、か。


まだ『中学二年生』という感じがしない。


新学期は、いつも心が置き去りにされる。


体だけが成長して、精神はあまり学年に見合っていない気がして仕方ないのだ。