中学二年生に進級した。
結子と美沙、瑠花とはクラスが離れてしまった。
また四人で遊ぶという約束をして、私は新しい教室に入った。
新学期特有の空気を纏っている。
ほのかに香る桜の甘い匂いが風が吹く度に教室に流れてくる。
もう少しこの空気を味わっていたかったけれど、自分の席を確認するために教壇に向かうと、声を掛けられた。
「おはよう、富木島さん」
聞き覚えのある、何度も聞いた声。
手に汗が滲む。
喉はからからに乾いている。
声が震えそうになる。
ゆっくり振り向くと、保坂さんがいた。
「……おはよう」
「同じクラスだね、うちら。」
「……そうだね、よろしくね、保坂さん。」
何とかそれだけ返した。
「あはは、硬いよ!
保坂さんって止めてよー!」
……は?
「あたしも富木島さんって呼ぶの、辞めるからさ!」
「……そっか、そうだよね、硬いよね。」