チャイムが鳴った。
空はもう、真紅になり、遠くの方は夜が近づいている。
……帰らなきゃ。
鞄を持って立ち上がり、ラケットを持ってシューズを持って、下駄箱を出る。
部員と鉢合わせないうちに早く帰るに限る。
……やましいの?
避けているということは、この事が悪い事と思っているのか。
行きたくなければ行かなきゃいい、それでいいじゃない。
正論だけれど、どこかで自分の事なのに納得出来ない私がいた。
もやもやしながらすっかり夜になってしまった街の電車に乗り、歩く。
「……ただいま」
「おかえり」
「ちょっと来い」
お父さんがこの時間にいるなんて、珍しい。
「……何?」
「話は聞いた。」
「……辞めていいでしょ。」
「別にお前が辞める必要はない。
状況は改善してもらうから。
これから学校でも審議があるらしい。」
「……辞めないんだ。」
だったらもう辞めたい。