事態を飲み込んだお母さんの口が震えている。


「そう。

保坂さんを中心に、私は半年くらいいじめられてきた。

仕事をさせなかったり、今まで普通に名前を呼んでくれていたのが『富木島さん』に変わったり、挨拶を無視されたり。」


この際だから、全員辞めさせてしまえというやけくそな気持ちも半分くらいあった。


こっちは被害者なんだ、というハンデじみたものも少なからず感じていた。


「もう、あの場所にいるのは限界。

辞めたい。

次の部活も決めてある。

いいよね、辞めて。」


あまりに淡々とした説明だった。


お母さんは目の前で泣きそうな顔をしている。


私の方が泣くべきなのに、涙が出てこない。


今頃号泣しているはずなのに、私の目はからっとしていた。


「……なんで黙っていたの……?」


ようやく一言絞り出したという感じだ。


私以上に辛そうにしている。


「……事を大きくしてから言った方がいじめた人達を部活から追い出せるって思っていたから。」


これは半ば本気だった。