「……はい」
「部活、行きなさい。
呼び止めてごめんなさいね。」
「……いえ、大丈夫です。
失礼します。」
……先輩、分かっていたのか。
顧問の先生もこれからは変に思って部活に来るかもしれない。
息を吐き出すと、真っ白い。
もうすぐ春なのに、寒い。
私の心も、寒い。
いつになったら馴染めるのだろうか。
今すぐ教室に戻って着替えて帰りたい。
だけど、放課後の居場所はここにしかない。
一人でも、無視されても、罵倒されても、私はあの小さな箱庭のような空間で生きないといけない。
「田村先輩、先生に呼ばれて遅れました。」
「はい、了解でーす。」
前衛のボレー練習なので、後衛である私はボール拾いをしなくてはいけない。
声出しもしないといけない。
……いいなあ。
楽しそうで。
私は毎日死にそうな思いで部活に来ているのに、保坂さんは自分の王国だからか、毎日楽しそうだ。
もう腹を立てる気力もなかった。