「富木島さん、ちょっといい?」


なぜか呼び止められた。


「……はい」


「ここじゃ話しにくいから、場所移すわね。」


何か深刻な話なのだろうか。


連れていかれたのは空き教室だった。


「いいわよ、座って。」


「……失礼します。」


「……あのね、あなたのことについて高二が心配していたわ。

何か深刻なことがあったんじゃないかって心配していたの。

最近は部活も休みがちだし……。

……何か、あった?」


……見ていた。


見てくれていた。


先輩は気づいていた。


言ってしまいたい衝動に駆られた。


だけど、これは私の問題。


先生達を巻き込みたくなかった。


「……いえ、大丈夫です。

何もありません。」


「……本当に?」


まだ訝しんでいる。


もう一押し。


「何も無いです。

疲れも溜まっているからかもしれません。」


「……ならいいんだけど。

困ったことがあればちゃんと言うのよ。」