「……分かったよ、やる。」
最悪だ。
人の顔色ばかり伺って自分の意見を通せない。
周りの人も嫌いなら、自分も嫌いだ。
俯いてボールを拭き続けた。
最後の一つは丹念に拭き上げて終わらせた。
倉庫にボールを戻してから、鍵を職員室に返さなくてはいけない。
「鍵、もういいよ。
うちらで返しておくから。」
「え、でも私も当番だし……」
「いいよ、だって昼やってもらうんだし。」
それが目当てだったのか。
私一人が全てやっていたということにしないためだ。
「……ありがとう」
心にもないことを言って、教室に戻った。
「あ、華夏、おはよう!」
「おはよう」
「見てたよ、昨日。」
「……え?」
たぶん、練習のことを言っている。
「うちらに手を振ったら先輩に怒られてたでしょ?」
なんだ、そのことか。
「あはは、うん。
練習終わったあとなのに駄目らしいんだよね。」
「やっぱ運動部は厳しいね。」
「うん」
いろんな意味で。