基本、ボール拭きは三人くらいでやるが、土曜日の当番は一人が辞めてしまい、奥野さんと二人でやるところだったのを渋谷さんが手伝っている。
最初はありがたかったけれど、だんだん疎ましく思うようになった。
先輩が目の前でボールに空気を入れているのをいいことに、私にとってデメリットでしかないことばかり聞いてくる。
「そういえばこの前のランニングの前もまたトイレ行ってたよね?」とか「土曜日の部活に出るの遅くない?」とか。
誰のせいで遅くなってるんだっつーの。
さすがに舌打ちはまずいと本能的にやめて、曖昧に笑って返している。
「……ねえ、」
普段は話さない奥野さんが声をかけた。
よく聞き取れない。
「……え、何?」
「今日の部活、出られないから準備やっておいて。」
相変わらず小さい声。
「……私、掃除もあるんだけど。」
「週一回くらい良くない?
お弁当食べなくても。」
渋谷さんも加勢する。