「先輩怖いからさ。」
適当に返したけれど、心の中は全く違った。
もしもあの場所に友達がいれば、私も喋って拾わなかったに違いない。
本当のところは、ただ単純に話す友達がいないからボールを拾っていただけなのだ。
けれど、返って黙々とボールを拾い続けた事が体育会系のお母さんには良い事のように写ったらしい。
「やっぱりお嬢様学校っていうだけあるわね、校舎も大きいし綺麗だし。」
話題が変わり、ひと安心した。
これ以上余計なことを聞かれないためにご飯を食べてからは自室にこもった。
……これからどうしよう。
凛ちゃんですら『富木島さん』と呼ぶようになった。
いずれ、私の名前は忘れられていくのかもしれない。
同じクラスの由奈ちゃん、絵奈ちゃん、香織ちゃんは私の名前をまだ呼んでくれるのだろうか。
初めて人間関係に困った。
まさか私がこんなことになるなんて思いもしなかった。