その怒りをカズに向けたって、なにも変わらないことはわかっているはずなのに、優奈はその感情を自分の中で消化できずにいた。


「あたしたちに会ったほうが、記憶を思い出すんじゃないの…!?」

「…それはわからない。ただ、隼人自身も精神的に不安定な状態みたいで、無理に思い出そうとすると混乱するらしい…」


…混乱。


思い出されるのは、病室での隼人の姿――。


『…かりんっ!……うわぁぁああ!!』


ベッドの上で苦しむ隼人は、目を背けたくなるくらい見ていてつらかった。

まるで…隼人が隼人じゃないみたいで。


「あたしたちならともかく…、かりんはっ!?隼人の彼女なんだよ…!?かりんなら、お見舞いに行ったって――」

「…いいの、優奈」


わたしは、さらに抗議しようとする優奈の手の上に、そっと自分の手を重ねた。