わたしは、そう信じていた。


その願いが叶うことがないとも知らずに――。



4月になった。

今年の桜の開花は遅れていて、まだ3分咲き程度。


カズに呼ばれて、わたしと優奈はカズが指定したカフェに向かっていた。

学校帰りに、隼人も含めて4人でよく立ち寄っていたお馴染みのカフェ。


いつものようにカフェオレを注文したけど、…なぜだろう。

今日のカフェオレは、いつもよりも苦く感じた。


丸いテーブルを囲むように、わたし、優奈、カズが座る。


右隣りに座るカズの表情は、どこか険しくて…。

いい話ではないことは、聞かなくてもわかった。


「隼人のことだけど…」


マグカップに入ったコーヒーをひと口飲んで、カズが重い口を開いた。


「再検査の結果…、記憶喪失ってことが判明した」