「違うっ。あたしは優奈!こっちがかりん!頭打ったからって、まさか…忘れたなんて言わないでしょ!?」


わたしを引き寄せて、よく見ろと言わんばかりに隼人に促す優奈。

そんなわたしの顔を、隼人はぼうっと見つめる。


「…かりん」


隼人がぽつりとつぶやく。


久々に隼人に呼ばれた名前は、こんな状況でも…やっぱり懐かしく聞こえて――。

でも、明らかにいつもの隼人と違う光景に、わたしは戸惑いを隠せなかった。


「…かりん、かりん……」


隼人はまるで呪文を唱えるかのように、わたしの名前を繰り返しつぶやく。


「かりん…、かりんっ…」


だけど、徐々に呼吸が乱れていくのがわかった。

額には、汗も滲んでいる。


「隼人…!?」


さっきまでの落ち着いた様子の隼人とは違い、苦しそうに頭に手を当て、ゼェゼェと荒くなる息遣い。