…そしてお母さんは、そのあとに続けてくれた。


あの日、なにがあったのか――。



わたしと隼人が待ち合わせをした、あの日、あの場所、あの時間。


男の人が女性のバッグを奪って逃走するという引ったくり事件が起こった。

歩道橋を駆け上がって、わたしに向かってきたのはその男の人だった。


そして、わたしは突き飛ばされ――。


本来であれば、階段から真っ逆さまに落ちて大怪我は免れなかった。


だけど、わたしが奇跡的に擦り傷や打撲程度で済んだのは…。

――隼人が守ってくれたから。


隼人は、階段でバランスを崩したわたしを抱きかかえ、いっしょに階段から落ちた。

わたしの頭を包み込み、自分が下敷きになるようにして。


…それが、お母さんが警察の人から聞かされた、目撃者の話だという。