避けることができずに、…わたしは男の人に突き飛ばされたんだった。


…だから、こんなにも全身が痛いのか。


意外と冷静に、今の状況を理解することができた。


だけど、次に思い出したことに、わたしの冷静さは一瞬にして失われる。


「…隼人はっ!?」


わたしが歩道橋から落ちるとき、なんとか駆け寄ろうとする隼人の姿が頭によぎる。


最後に、わたしの名前を呼んでくれたのを思い出した。


「隼人もいっしょにいなかった…!?」


訴えかけてみたけど、なぜかお母さんの表情は暗い。


なにかよくないことが起こったのだと、嫌でも想像がついた。


「…隼人は……?隼人は…無事なんだよね…?」


お母さんの服の裾をつかんで、必死に顔を覗き込む。

だけど、お母さんは目を合わせてくれなかった。