「べつに、オレはいいよ」

「そろそろ学校に戻ろっか…!保健室にいないってわかったら、先生も心配するよね」


わたしは屋上を下りようと、歩き出した。

すると、その腕を後ろから握られた。


「待てよ、かりん」


背中に響く、カズの低い声。

それに、なにか言いたそうにわたしをじっと見つめている。


「…どうしたの、カズ?眉間にシワなんか寄せちゃって」

「どうしたもこうしたもねぇよ。…こっちが見てられねぇ。バレバレの空元気しやがって」

「空元気って…。わたしは、なにも――」

「嘘つくんじゃねぇ。本当は泣きたいくせに、オレの前だからって我慢しやがって」


うつむくわたしの両頬を、カズが片手でムギュッとつかむ。


そのせいか…。

それとも、カズの言葉がしみたのか…。


ぽろりと涙が頬を伝った。