その表情は、初めて隼人の病室前で会ったときとはまったく別のもので――。

まるで、疫病神がやってきたとでも言わんばかりに、隼人に近づかないようにわたしを凝視する。


「母さん!この2人、中学の友達みたいで、俺に会いにきてくれたんだっ」

「ええ、そうみたいね。でも、下にいるお父さんを待たせるのも悪いから、隼人は先に行きなさい」

「…母さんは?いっしょに行かないの?」

「すぐに向かうわ。せっかく隼人のお友達がきてくれたんだから、あいさつしておかないとね」

「わかった。じゃあ、俺は先に行くから」


隼人はそう言うと、ゆっくりと車椅子の車輪を押した。


わたしの横を通り過ぎていく隼人…。

その後ろ姿を追いかけたかったけど、立ち塞がるように隼人のお母さんが割って入った。


「広瀬さん…だったかしら?」