新しい記憶の…初めての友達。


以前までの関係のことを考えたら、わたしにとっては寂しい言葉になる。


でも、隼人がわたしの名前を覚えてくれるのなら…。

いつか…記憶を思い出してくれるかもしれない。


わたしは、わずかな希望にかけてみようと思った。


「わたしの名前は、か――」

「…隼人!」


…『わたしの名前は、かりんです』。

そう伝えようとしたとき、わたしの声に被せるように、後ろから隼人の名前が呼ばれた。


「隼人、そろそろ行くわよ」


振り返ると、それは…隼人のお母さんだった。


ご両親には、隼人には会わないでと言われている。

だけど、それを破って隼人に会いにきてしまった。


遠くにいるカズには会釈した隼人のお母さんだったけど、わたしを見るなり表情を変えた。


…唇を噛みしめ、わたしを見下ろす。