「…まだ病院にいたんだ!」


わたしとカズは慌てて病室を飛び出し、隼人がいる屋上へ急いだ。



…ゆっくりと屋上のドアを開ける。


手入れされている花壇には、色鮮やかな花たちが植えられていた。

フェンスの向こうには、わたしたちが住む街も見える。


そして、わたしたちの視線の先には、病室から見えた場所と同じところに、車椅子の隼人がいた。


病室にいたときとは違って、強く吹きつける春の風。

だけど、それも隼人に歩み寄ると不思議なことにピタリと止んだ。


まるで、隼人との最後の時間を静かに見守ってくれるかのよう。


ポンッと、後ろから背中を押される。

見ると、行けと言わんばかりに顎で合図するカズだった。


「…カズは?」

「俺はいいよ。…それに、さっきも言ったろ?言葉は交わせなくても、俺はただ隼人の姿を見れただけで充分だから」