ぽつりとつぶやくカズ。

カズだってつらいはずなのに、落ち込むわたしを励ますかのように、わたしの頭をなでた。


わしゃわしゃと頭をなでるカズ。

だけどその手が、…ピタリと止まった。


不思議に思ってカズを見ると、カズは窓から遠くのほうを凝視していた。


「かりん…、あれっ……」


カズの口から、うわ言のような声が漏れる。

そのカズの視線をたどるように、わたしも目を移す。


視線の先には、フェンスで仕切られた病院の屋上が見える。


さらに目を凝らすと――。

そこには、車椅子に座った人がいた。


屋上から、まるで名残惜しそうに、自分の街を見下ろすように眺める…その人物。


胸がドクンと跳ね、カズと顔を見合わせる。


「「…隼人だっ!」」


そう。

その人物とは、紛れもなく隼人だった…!