力の限りを尽くし、疲労でその場から動くことができないカズを残して、わたしは隼人の病室に向かった。


隼人…お願いっ。

まだ病室にいて…!


そう祈りながら急いだ。



ようやく隼人の病室が見え、閉まっているドアを勢いよく開ける。


「隼人…!」


病室には、退院するために荷物の片付けをする私服に着替えた隼人が立っている。


そんな光景を想像していたのに――。


病室は、……もぬけの殻だった。


飾られていたお花や隼人の荷物はなく、ベッドもシーツや布団すらない裸の状態だった。


ついさっきまで、ここに1人の患者が生活していたとは思えないような…殺風景な病室。


「隼人……」


ベッドに手を置いても、なんの温もりも感じない。


――間に合わなかった。


カズ、優奈…、ごめん。