「カズ…!その自転車っ…」

「だれのか知らねぇけど、今はこれしかねぇ!早く後ろに乗れ、かりん!」


…そうだよね。

走って病院なんて、とてもじゃないけど間に合わない。


今は、迷ってる暇なんてなかった。


「しっかり捕まれよ、かりん!」

「…うん!」


わたしは、カズの背中にしがみつく。


始業式をボイコットして、勝手に他人の自転車に乗って学校を飛び出す。


バレたら、…絶対に怒られる。


今まで、それなりに真面目に先生の言うことを聞いて育ってきた。

だから、こんなことをするのは初めてで、心臓がバクバクしている。


だけど、カズといっしょならなにもこわくはなかった。

それに、病院までわたしを送り届けようとしてくれるカズの背中は、とても大きく感じた。


「バレたら、いっしょに怒られよう」