「なんとかって――」

「カズ、かりんを頼んだよ!」


優奈がカズの肩を叩くと、カズはゆっくりとうなずいた。


「かりん、行くぞっ」

「…えっ、どこに…!?」

「んなの、隼人のいる病院に決まってんだろ!」


カズは、ルールや規則を破るような人ではないけれど――。

その瞳に迷いはなく、カズは力強くわたしの手を引いた。


そして、優奈はというと――。


「先生〜!広瀬さん、ちょっと体調が優れないみたいで、園田くんが保健室に連れてくみたいですっ」


教室から出ていくわたしとカズを庇うように、先生に話をしてくれていた。


そのヘタな言い訳のおかげで先生に止められることもなく、カズに手を引かれたまま校舎を抜け出した。



駐輪場で、だれのものかもわからない鍵がついたままの自転車に跨るカズ。