もし隼人が記憶喪失のままでも、またいっしょに過ごせる日がくると思っていた。

いつか記憶が戻ることを信じて。


でも、どこに行くかもわからないんじゃ――。

…どうやって会えばいいというの?


「隼人は、今日10時に病院を退院する。おそらく、そのまま新しい家へ引っ越す予定だ」

「…今日の10時って!あと1時間しかないじゃん!!」


教室の時計に目をやり、そう叫ぶ優奈。


10時までに会いに行かなければ、隼人にはもう二度と会うことができないかもしれない。


でも、ここから病院までは近くはない。

今出たところで、間に合うかどうか…。


「そこの3人、早く廊下に並びなさい。じきに体育館に向かいますよ」


他の生徒は廊下に並んで待機しているにも関わらず、わたしたちだけ教室に残っていたため、先生に注意されてしまった。