――空っぽの机。

そう…隼人の席だ。


隼人の席を見つめるメガネの奥の先生の瞳は、なぜだか寂しそうに見えた。


「一番後ろの空席ですが、そこは瀧隼人くんの席です。1年のときはクラスが違う人でも、名前は聞いたことがあるでしょう」


先生の話に、クラスメイトのみんなはコクンとうなずいている。


隼人は、人懐っこい性格とサッカーのうまさで、入学した頃から他クラスのみならず、上級生からも人気があった。


だから話したことはなくても、おそらく一度は隼人の名前は聞いたことがあるはず。

隼人は、学校ではちょっとした有名人だったから。


そんな隼人が同じクラスだというのに、この教室にいないことに、他の生徒たちは不思議そうに隼人の席を振り返っていた。


「彼も、この新しい2年3組の仲間です。…ですが」